ドキドキ ③

<なれそめ編>


待ち合わせのネカフェについて
狭いお部屋に入って
壁際に座った私


誠:飲み物、勝手にとってきちゃった
  ミルクティーで良かった?
とも:あ!ありがとう
   うん、好き好き
誠:この間のお茶の時飲んでたもんね


そんなこと覚えてくれてたんだ
嬉しい


しばらくは
初めてのネカフェに盛り上がって
あーでもないこーでもないと
他愛のない話をした


フと話が途切れた


誠:・・・・
とも:・・・・


怖かった
誠君が何か言いたげで
でも言いにくそうにしてる気がして
予感が確信に変わってしまいそうで
私は仕事の話を振った


今日の仕事の話を聞いたり
共通の知人の話をしたり


誠君が話し始めないように
聞きたくない話題にならないように


おもむろに誠君が立ち上がる


ドキッとする


壁際の鞄から、CDとDVDを取り出して
「これこれ!忘れるところだった(笑)」
と笑いながら
私のところに来て手渡してくれた
「あーほんとだね(笑)ありがとう」
受け取ると
誠君はそのまま壁際の私のすぐ隣に座った


とも:このCDの中に「糸」があるんだね
   中島みゆきの「糸」のカバー
   この曲、大好きなんだ
誠:あー入ってるね
  「糸」好きなんだ
とも:うん、歌詞がね
誠:・・・・
とも:・・・・


会話が続かない
言いにくい話なんだね
緊張のせいか
エアコンが強すぎたせいか
すごく寒く感じた


誠君の横顔を見た
あーカッコいいなぁ
やさしい目が好き
すごく愛しくて
すごく切なくなった


左にいる誠君の方に
頭を傾けてもたれかかった
左側だけ誠君のぬくもりを感じる


心臓がドキドキする


不意に誠君が口を開いた
「CD代・・・もらいますよ」


え?って声に出す暇もなく
背中に腕を回されて
倒されて
気づいた時には
キスをされてた



え・・
えぇ・・????


やさしく重ねるだけのキスから
深いディープキス


そのキスが
すごくすごく気持ちよくて
最初は混乱していた私も
ディープキスに応じた


時間はどのくらいだったのか
分からない
すごく長かったようにも思うし
本当は10秒もなかったのかもしれない



誠君の顔が離れて
身体を起き上がらせてもらって
恥ずかしさと混乱とで
顔を見ることもできない


そんな様子を察してか
頭を『ポンポン』として
「帰りましょうか」と立ち上がる誠君


色んなことが聞きたいのに
ふわふわと地に足がつかない感じで
頭が全く働かない


身支度をする誠君を見ながら
何か言いたいのに
言葉が出ない
先に一段低い靴置き場に降りて
靴を履く誠君
私も彼のすぐ近くに行って
順番を待つ


屈んでいた誠君が身体を起こすと
段差のせいで
普段は25センチほどある身長差が
ほぼ同じ目線



目が合う
綺麗な目
誠君は遺伝なのか
色素が薄く
目が薄茶色


「綺麗な目・・」
誠君をじっと見た
「もう一回キスして?」
おねだりせずに居られなかった


「うん」って言いながら
今度は最初から
深いディープキス
何も考えられないくらい
気持ちいいキス


お互いの心臓の音が聞こえそうなくらい
ドキドキしたキス



このキスから
誠君の態度は
かなり甘い感じに変わった