恋に落ちた日

<なれそめ編>
LINEを交換してもらったものの・・・
一年に一度か二度飲むだけの関係だった誠くんとの
距離感はまだまだ遠く


とも:今夜は寒いですね
誠:(3時間後に)夜は寒いですね。明日もがんばりましょう。


。。。終了~💦
こんな程度のやりとり。
私も私で離婚に向けて、色んなことを調べたり確認したり
忙しくしていて、飲んだ時に感じた誠くんへのドキドキも
日が経つにつれて、なんとなく平常心に戻っていきました。



飲んでから2週間後くらいに、あるセミナーに参加すること
なりました。
参加者リストを見ると、なんと誠くんの名前が。


とも:今日の〇〇のセミナー加藤さん(この頃はまだ苗字にさん付け)も行くんですか?
誠:あー行きますよ。行くの?
とも:はい。偶然にも。・・・良ければ一緒に帰りませんか?
誠:じゃあ、終わったら駅のホームで待ち合わせしましょうか。
とも:はい!


セミナーが終わって、ホームに向かうと
まだ誠くんはいませんでした。
一緒に帰るだけなのに、自分から誘ったのに
ドキドキして落ち着かない私。
10分くらい待っていると、電話をしながらこちらに
歩いてくる誠くんが見えました。


「すみません、遅くなっちゃって」
「あ、いえ大丈夫です。全然。」
なんて会話をしながら電車に乗り込んで
セミナーの話とか仕事の話をしながら
電車はどんどん進んでいきました。


電車の中の会話も普通に楽しかったのに
私はどこかで、敬語じゃない
仕事モードじゃない誠くんを
飲んだ時に見せてくれたあの誠くんの顔を
もう一回見たいと思っていました。


私と誠くんは同じ沿線で、私の方が手前で降ります。
次の駅で降りなければ、もう私の地元の駅に
なってしまう・・というタイミングで
私は誠くんをお茶に誘いました。
「あの・・まだちょっと早いですし、良ければ少しお茶していきませんか?」
「・・・良いですけど、帰る時間は大丈夫ですか?」
「1時間くらいなら、大丈夫なので」


私の地元の駅の一つ前で降りて、駅前のファミレスに入ることにしました。
席について、注文をした途端に誠くんの会社スマホが鳴ります。
「あ・・・ごめんなさい。ちょっと外で電話してきます」
そう言い残して彼は出ていき、
そのあとしばらく戻ってきませんでした。


「ごめんなさい、実はちょっとトラブってて」
電話から戻った誠くんはその後もメールを打ったり
チェックしたり・・。
会話も当然トラブルの内容になり
あっという間にタイムリミットになりました。


二人で席を立ち、お会計をする際
お金を払おうとする誠くんを制して
「私が払いますよ!」と半ば強引にお茶代を払った私。
私から誘ったし、前の飲み代は実は誠くんに
ごちそうしてもらっていたし、今回は絶対に払おうと
思っていたのです。(と言っても1000円未満・・)


お店の外で一足先に待っていた誠くん。
「トラブルもあったのに、付き合ってもらって・・ありがとうございました!帰りましょう」
「・・・女の子にお金を払わせるなんて。。カッコ悪いです。次からは私が払いますからね」
「!?なに言ってるんですか~。そんなことされたら、私から誘えなくなっちゃいますからね~。」と言いつつ
(今、『女の子』って言った?『女の子』って・・。)
と心臓が飛び出そうなくらいバクバクしました。


地下のお店から地上に出ると雨が降っていました。
傘を持ってなかった私。
心臓のドキドキを気づかれないように必死に話します。
「わー雨ですね。なのに折り畳みを持ってないっていう女子力の低さ(笑)駅まですぐだし、小走りに行けば大丈夫ですよね~」
「傘ありますから」
すっと傘を差して、私の横に並ぶ誠くん。
(近い!!近すぎます加藤さん!)
と心で叫びながら、心臓の音とか真っ赤な顔とか
色々知られたくなくて離れてしまう私に
「濡れますよ?女の子は身体冷やしちゃだめですよ」
私は精一杯平気なフリをして
「『女の子』なんて、アラフォーには使いませんよ~。お母さんは頑丈にできてますからね」と答えました。


でも本音は・・・
この日、2回も「女の子」扱いをされて
優しくしてもらって
泣きたくなるくらい嬉しかったんです。
あの飲んだ日にみた、お嬢さんに向けた優しい目。
あの目が私にも向けてもらえた気がして
嬉しくて嬉しくて。
誰かに心配してもらったのなんて、何年ぶりだろう。
女性として扱ってもらったのなんて、何年ぶりだろう。


この日、私は彼に恋をしてしまったのだと思います。