過去があるから、今がある

私の両親は今でこそ歳も取り、多少落ち着いているものの
私が思春期の頃は、夫婦仲が悪い夫婦でした。


母は家の中で圧倒的に強く
父の至らないところや
不器用で頑固なところを
私たち子供の前でグチグチと言う人で


父は父で、何度直してほしいと言われても
自分を変えられず、素直謝ることもできず
かといって母の酷い罵りを諫めることもせず
受け流すような人で


母はその態度に更にイライラを募らせ
父は更に一層母の訴えに耳を貸さない
そんな悪循環な夫婦でした。


中学や高校時代の私は
「この二人は何故結婚したんだろう」と
「お互いに相手を間違えたんだ」と
そんな風に思っていました。


高校生のある時
クラスの友達と親の話になったとき
ある友達の両親がとても仲が良いと聞かされました。


お父さんはお母さんより10歳ほど年上で
お母さんはお嬢さん育ちの世間知らずな感じの人で
若くしてお父さんと結婚したお母さんは
お料理もお掃除も上手にできなくて
ウッカリミスや忘れ物なんかも結構ある
そんなお母さんだけど
お父さんは
そんなお母さんが可愛くて仕方がないと
普段から言っていたそうです。


ある時なんかは
友達と友達のお姉さんとお母さん
3人全員が、玄関の靴を脱ぎっぱなしでいたのを見たお父さんが
娘二人には「お前たち!!ちゃんと揃えなさい!」と注意したのを聞いて
「お母さんだって揃えてない!」と反抗したら
「お母さんは可愛いから良いんだ!」と
平然と言ってのけたというお父さん。


友達はプリプリしながら
「信じられなくない?お母さんばっかり贔屓されてる!!」って
そんなことを言ってたけど
仲の悪い両親しか知らなかった私は
本当に驚いて
それと同時に仲の良い両親を持つ友達が
羨ましくて仕方がありませんでした。


何よりも
お父さんが今でもお母さんを可愛くて仕方が無いと思ってる様子が本当に良く分かって
本来なら娘を猫かわいがりしそうなのに
娘よりもお母さんを「可愛い」と堂々と言う友達のお父さんが
とても素敵だと思って
何年経っても40代過ぎても、旦那さんにそこまで可愛がられてる友達のお母さんは
女として羨ましいと思ったことを今でもよく覚えています。



家庭のロールモデルが無かった私にとって
漠然とこの友達のご両親のような夫婦になりたいとずっと思っていました。


子供が「まったくうちのパパとママは(;^ω^)」って呆れるくらい
仲良しの夫婦になりたかった。
旦那さんに大切にされて
可愛い可愛いと可愛がられる妻になりたかった。


でも現実は
最初から私の方が前の主人を好きで
一人目妊娠中に
貯金を使い込まれて
多額の借金が分かって
それでも仲良しでいたかったから
一緒に返していこうと
前向きに夫婦の関係を構築したくて
欲しいものも我慢して
なるべく節約して
「大丈夫大丈夫。私たち夫婦は借金くらい乗り越えられる」って
必死に頑張っていて
でもその頑張る隣に前の主人はいなかった。


ウソをついて借金をして
借金がバレると
借金を返すために元手が必要だと借金を繰り返して
そんな前の主人に
「博打で借金を返すなんて無理だ」と
シリアスに口で言うと逆切れするから
軽く伝えたり
手紙を書いたり
メールをしたり
色んな方法で借金をやめてくれるようにお願いをして
でも、一度も私にきちんと向き合って
自分の思いや考えを伝えてくれない人でした。


好きな人なのに何を考えてるのか分からない
好きな人を信じることができない
借金自体よりも、これが一番辛かったなあ。。


誠君には
離婚の相談をしたのがきっかけということもあって
私が何が許せなくて
何が悲しくて
何がつらくって
本当はどうありたかったのか
前の主人にどうしてほしかったのか
そんな話もいっぱいして
その度に
「そっか。それは悲しかったね」
「頑張ってたんだね」と
前の主人を批判したりはせず
私の気持ちに寄り添った言葉をたくさんくれました。


「私の気持ちを分かってくれた」
「頑張りを認めてもらえた」
そのことが本当に本当に嬉しくて
いつも一定の穏やかなテンションで
丁寧な口調で話す誠君の言葉は
とても心地よい癒しです。

高校生の時に聞いた友達のお父さんのような
「お母さんは可愛いから良いんだ!」なんていう
くすぐったくなるような
つい微笑んでしまうようなセリフは誠君には言えないでしょうけど
いつも「頑張ったね。イイコイイコ」と

人前でもニッコリしながら頭を撫でてくれる彼からは

間違いなく「大切にされ、可愛がられている」と感じられます。


やっと見つけた安心できる場所を
残りの人生ずっと大切にしていきたい。