封印

<なれそめ編>


「頭を冷やした方がいい」と言われて
LINEを交換してから
すっかり夢中になっていた自分に
改めて気づかされた。


いくら離婚を協議中とはいえ
まだ話し合いをし始めたばかり
どんなに元旦那に気持ちが無くても
私は既婚者で子供たちのお母さんなんだ。


彼は、私の危うさに気づいたんだと思う。
のめりこんでしまいそうなわたしの様子に
「牽制」をした。


あのやりとりの晩は、泣きながら寝て
次の日はマンガみたいに腫れぼったい目に
夢じゃなかったことを思い知らされる。


加藤さんに後ろめたさなんて感じさせたくないよ。
いつも相談に乗ってくれて
的確なアドバイスをくれて
楽しく夕飯のメニューを考えてくれて
それだけで十分だよね。
それ以上を求めるなんて贅沢だよね。


加藤さんが、私とその距離感が良いなら
私もその距離感で良い。
そうすれば加藤さんが後ろめたさなんて感じず
私と楽しくやりとりできるなら
その方がずっと良い。


だから、私はこの気持ちを
全力で封印しなくちゃ。
うん、できるよきっと。
片思いは若いときいーっぱいしてきたし
振られるのも慣れてるよ。
どんなに好きでも諦めるしかない恋があることも
もう大人だから分かってる。


とも:昨日の件、頭冷やしてきました
   ちょっと、久々に女の子扱いされて
   舞い上がってしまってたみたいで・・
   離婚とか今後の不安とかで
   誰かに甘えたかったのかもしれないです
   離婚するなら、それこそ、しっかりしなくちゃですよね
   大丈夫です
   私は女の子じゃなくてお母さんですから
   これからもお母さんとして、夕飯のメニュー
   一緒に考えてください
誠:勿論だよ
  ともさんとのやりとりは楽しいから
  今日はヒレカツにしようかな(笑)


この距離感が良いよね。
頑張る。

牽制

<なれそめ編>
平日だけだったLINEが
夕飯のメニューを考えるっていう
共通のテーマのお蔭で
土日もLINEをするようになった私たち。


夕飯のメニューだけではなく
子供の事、仕事の悩み、離婚のこと
いろんなことを話すうちに
私の中で誠君の存在は
とても大きくなってしまっていた。


自分でも、LINEにのめりこんでしまっていると
分かってた。
今まで帰宅したら、放ったらかしだったスマホを
常に持ち歩くようになってた。


『誠君はどんなつもりで
私とLINEしてくれてるのかな・・。
また、お茶してくれるかな。
誘ってみようかな』


とも:今度また加藤さんが早く帰れるとき
   お茶つきあってもらえませんか?
誠:お茶、付き合うのは全然良いんだけど
  自分の家も大事にしてね
とも:はい・・・(シュン・・)
   (気を取り直して)加藤さんって
   お誕生日いつなんですか?
誠:なんで?
とも:(なんで、って・・泣)
   いえ・・気が進まなければ良いです
誠:別に良いんだけど、〇月△日ですよ
とも:!!私も同じ〇月です!!
誠:そうなんだ じゃあ〇月はお誕生日飲み会でもしますか
とも:本当ですか~すごく楽しみにしてます!!!


誕生日を聞いたの迷惑だったのかなって
悲しくなった後の
まさかのお誕生日飲み会の約束
気持ちの上がり下がりに心臓はドキドキしっぱなしで
つい言ってしまった。


とも:なんか・・・自分でも笑ってしまうくらい
   ドキドキします
誠:それは問題だね
とも:・・ごめんなさい
誠:・・ともさんとは一緒にいると楽しいよ
  LINEも
  でも、やっぱりちょっと後ろめたいよね
  何にもなくてもさ
  だから
  ともさんの気持ちがあまり上がっちゃうと
  後ろめたさがアップするかな
  お互いちょっと頭を冷やした方がいいよね
  今日は寝よう
  おやすみ


「後ろめたい」
「頭を冷やした方がいい」


舞い上がってたのは私だけ。
パタパタっと落ちる涙を止められなかった。

縮まる距離

<なれそめ編>
誠くんの女の子扱いがうれしくて
ダメだと思いつつ、せっせとLINEを送る日々。


と言っても8割私が話を振って、誠君が応えてくれる
そんなやりとり。
それでも、お互い知らないことを知れるのが楽しくて
趣味を聞いたり、部屋の写真を送ってもらったり
飼ってるペットの話をしたり・・。


なんてことない話ばかりだったけど
楽しくて仕方がなかった。
40代にもなって、こんな風に誰かとやりとりすることに
ワクワクしてしまうなんて・・。



基本は平日の夜、帰宅後から寝るまでに何回かラリーが
メインだったけど、その日は初めて日曜日の夕方にラリー。

誠:今日は夕飯のメニューはなんですか?
とも:えー。。。チキンカレーかなぁ。楽だし(笑)
誠:カレーですか。良いですね!うちは・・唐揚げかな。
とも:(@_@)??
   加藤さん・・が作るんですか?唐揚げ。
誠:そうだよ。土日の夜ご飯は俺の当番。


男性が夜ご飯を定期的に作る、という感覚が無かった私。

父も元旦那も、年に1回~数回イベント的に作るだけ。
毎週末当たり前に作ってるという話を聞いて
すっごく驚くと共に、よくわからない親近感を感じてしまった。


そこからは、土日の夕方は必ずのように今日の夕飯どうする?
のラリー。
お互い相手のメニューにヒントをもらったりして
時には同じメニューを作ったり、作ったご飯を写メしたり。
「男と女」じゃなく「お父さんとお母さん」としてのやりとり。
そんな「THE日常」のやりとりが
なんだかとっても嬉しかった。


共通の話題「夕飯のメニュー」は
私たちの距離をググっと近づけてくれた。


今でも、この「ご飯どーする?」は続いていて
離婚後は、夕飯の買い出しを同じタイミングにして
電話で話しながら、バーチャルな一緒のお買い物(笑)
隣で一緒に買い物したいねーって言いながら
今はまだバーチャルで我慢。


いつか彼と一緒に夕飯の買い出しをして
一緒にキッチンに立ってご飯を作るのが私の夢の一つ。
叶いますように。。。